柏洋通信
2016.06.10
柏洋通信Vol.14
【6/10 品質改善プロジェクトが一区切りを迎えました。】
昨年の6月からスタートした品質改善プロジェクトも、5月24日で11回目を数えるまでになりました。当初は高まる一方のお客様の品質要求に応えるため、また足元ではクレームの件数が一向に減らない現実を危惧し、 私が「独立行政法人中小企業基盤整備機構」(以下中小機構)に支援をお願いしたことが発端でした。そして中小機構から派遣していただいたアドバイザーが市川さんでした。市川さんは大手弱電メーカーのOBで、ある自動車メーカーが米国でベンツやBMWをターゲットに高級車の分野に進出する際、 車載される純正カーオーディオの品質管理のトップを務めた方です。既に欧米でも日本車の価値は燃費の良さなどから認められてはいましたが、 こと高級車の分野では先行するドイツ勢に全く太刀打ちできなかった時代です。オーディオにも高級車にふさわしい見栄えと品質が求められるのはもちろんですが、アメリカという国の環境や人々の価値観、 そして大柄なアメリカ人の使い勝手に至るまで、徹底したマーケットリサーチが必要でした。 音質にこだわり抜く工場サイドと、あくまでアメリカ人の好みや使用条件を重視する市川さんサイドでは、 一歩も引かない丁々発止の攻防が続いたと言います。
結論から言うと、「良い品質」とは作り手の思い入れなど関係なく、あくまでお客様が満足するかどうかということです。当初は半年もあれば、何らかの改善策をまとめることができるのではと楽観視していたのですが、とんでもない思い違いをしていたことを思い知らされました。 結局1年という時間を費やし、紆余曲折、メンバーも変わりながら、ようやく品質管理の入口にたどり着くことができたというのが実感です。 それほどに品質を管理するということは、奥の深いものだと痛感した次第です。お恥ずかしい話ですが、私たちもようやく「品質」とは、コストや納期に優る経営の最重要課題なのだと気づきました。
現在の活動は実際に発生したクレームを対象に、真の原因を明らかにするため、プロジェクトのメンバー全員で「なぜなぜ分析」に取り組んでいるところです。 これも品質改善の基本中の基本として、広く生産現場で実践されている手法ですが、中々理屈通りに進むものではありません。何度も実際に「なぜ、なぜ」を繰り返さなければ、真の原因に近づくどころか、とんでもない方向に向かってしまう危険性があると感じています。 遅ればせながらまずはメンバーが手法を体得し、徐々に全社に浸透させていく計画です。 また並行して新製品の開発から市場へ投入するまでの一連の過程を、「初期流動管理」としてまとめ上げる作業も進めています。
今回のプロジェクトをもってひとまず市川アドバイザーとの活動は一区切りを迎えますが、品質改善の道に終わりはないと、 メンバー一同気持ちを引き締め、新たな課題に取り組んでいきます。
七島 徹
2016.06.06
柏洋通信Vol.13
【6/6 ヘルスフードエキスポに行ってきました。】
5月18日から始まった第14回ヘルスフードエキスポは、同時開催の国際食品素材/添加物展とともに、いわゆる「健康食品」の展示会としては国内有数の規模を誇っています。 出展社の数は海外からも含め500社近くに上り、健康食品の原料や添加物を扱う企業だけでなく、製造機器や検査装置、委託製造メーカーなども加わり、 年々その規模を拡大してきました。
健康食品というと昔は少々うさんくさいイメージも無きにしも非ずでしたが、急速に国の法整備も進み、 一定の効果や効能を謳うことのできるトクホや機能性表示食品などが市場に出回るようになって、 我々消費者にもすっかりお馴染みになりました。
従来は中高年の老化予防のための栄養補助食品といった意味合いが強かったものの、 いまでは若い女性向けのダイエットや美容の分野でも一般化し、さらにはスポーツで消費したエネルギーや栄養素を手軽に補充できる食品として、 若い人たちの日常のシーンになくてはならない存在にもなっています。
さて、私はヘルスフードエキスポとは、各社が素材の持つ機能や可能性をアピールする場だと考えています。 膨大な数の素材の中から、毎年テレビ番組で取り上げられるなどしてヒット商品が生まれることは、皆さんもご承知の通りです。
健康食品はガラスびんにとっても重要な分野です。これからも健康食品のトレンドから目を離せません。
七島 徹
2016.06.05
柏洋通信Vol.12
【6/5 目標設定レビューを行いました。】
4月26日、6,7,8級者(係長。課長相当資格)を対象とした目標設定レビューを行いました。当社では今期から目標管理制度の導入を目指し、外部のコンサルタントの協力を仰ぎながら活動を行ってきました。 今後、知識、技術、技能のレベルアップや次世代への継承を考える上で、目標管理をベースとした人事評価制度の確立は欠かせないとの考えによるものです。 事前に売上や生産などの全社目標に基づき各部門ごとの目標を設定し、それらを達成するに当たっての課題を明確にします。 さらにそれに基づき、個々人の達成すべき目標を明らかにし、成果や進捗度合いを評価します。 その際、可能な限り数値などの客観的な評価基準を設定します。ここで重要になるのは、本人や上司が相互に納得できる評価基準です。 もちろん当社も従来から人事評価は行っており、そのための評価基準は存在しました。しかしながら、 お世辞にも客観的とは言い難く、抽象的な文言が並ぶ納得性の低いものでしかありませんでした。
目標管理で重要なことは、もちろん結果を出すことです。しかし、それ以上に結果に至るまでの流れを見える化し、上司は部下の業務の進め方や進捗度を確認しながら指導することが重要だと考えます。 この一連の作業がすなわち、人材育成・開発そのものだと考えています。業務の流れを見える化することは、作業を標準化することにほかなりません。 作業の手順を細分化して簡潔な文章や写真で表し、注意すべき点や考慮すべき点を列挙します。 手順が明確だから、「できている」「できていない」の評価も自ずと納得性の高いものになります。 業務の流れを事前に把握できるので、どの段階まで進んでいるのかも理解できます。 本人と上司の間で目標達成に関する課題が共有できれば、その時点でゴールへの道筋がはっきりと示されたと言っても過言ではないでしょう。
目標管理の考え方は、特に製造現場では共感度が高いと思います。幾つものチームが目標に向かって同時に進んで行くのですから、 チーム間の技能や能力にばらつきがあれば、会社として結果を出すことはできません。 そのためには、チームを構成する個々人がそれぞれに必要な目標を定め、目標達成に向け努力することに違和感を抱く人はいないでしょう。 一方で営業や事務部門はチームといえども個人で完結する仕事が多く、個人の技能や能力に依存している部分が大きいと言われます。したがって、業務が属人化しやすくブラックボックス化、すなわち周りから見えなくなってしまいがちです。 しかも、それを良しとする風潮も見られます。当社も例外ではありません。しかし、私は営業や事務部門の仕事も経験上少なくても80%は標準化でき、 見える化できると確信しています。そしてそれを怠ることは、人材育成・開発を放棄していると言わざるを得ないと考えます。
当社の目標管理制度は未だ緒に就いたばかりですが、私は必ずや定着化させなければならないとの思いを強くしているところです。
七島 徹
2016.06.02
柏洋通信Vol.11
【6/2 第二回色替えが完了しました。】
4月18日の早朝から始まった第二回目の色替えは、無事23日に完了しました。初回に続きほぼ計画通りに進めることができたと考えています。
今回は茶から白(透明)への色替えになります。前回同様に原料の調合比を数段階に分けて徐々に茶から白へと切り替えていき、3日後の21日に 完全に白の調合比へ切り替え終えました。排出されるガラス(カレット)は時間が経過するに従って、前回の色替えの状況を映したビデオを逆回 しで見ているかのように、茶から徐々にグリーンへと変化し、最後はまたきれいな透明に戻りました。その間ガラスの性質が大きく変化する3日目 辺りで気泡が大量に発生することが懸念されましたが、今回はそうした状況も確認されることなく順調に色は変化していきました。
22日の午前中に福島県ハイテクプラザに検体となるガラスを持ち込み、詳しい分析を行ってもらったところ、色調、アルカリ溶出量、 比重、組成分析ほか全ての項目で透明なガラスの基準値を満たしました。さら慎重に色調の調整を行い、23日の早朝から順次生産を再開。 午前中には3ライン全てで生産を再開しました。
第一回目の白から茶への色替えに比べ、生産再開後の気泡の発生も抑えられ、 順調に生産は立ち上がりました。今後は専門家を交えて総括を行い、次回の色替えに備えます。
七島 徹
2016.05.28
柏洋通信Vol.10
【5/28 「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2016」に行ってきました。】
今年も去る4月19日、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2016」のお披露目会が、六本木ヒルズ(アカデミーヒルズ49階タワーホール)で開催されました。 これは日本酒の新しい魅力に光を当て、広く内外にアピールしようと始められたアワードで、今年で6回目を迎えました。 純米酒から大吟醸、今話題のスパークリングまで、日本酒の様々なジャンルの中から「ワイングラスでおいしい」をキーワードに、 優秀な銘柄を選定し表彰するものです。今回は過去最高の252の蔵元から648点がエントリーされ、厳正なる審査の結果、最高金賞33点、金賞165点が選ばれました。 当社のガラスびんに詰められた人気酒造様の「Rice Magik人気一スパークリングレッド」は、スパークリングSAKE部門で栄えある最高金賞を受賞されました。 我々にとってもうれしい限りです。お披露目会とは受賞されたお酒の風味や味わいを、その場で試すことのできる試飲会のこと。 第一部はスーパー、百貨店のバイヤーや飲食店の関係者など、いわゆるお酒のプロたちが対象です。一方第二部は我々のような関連する業界の人間や、純粋な日本酒ファンの方々が集います。
日本酒をワイングラスに注ぐことで、今まで感じられなかった新しい魅力が浮かび上がって来るといいます。 口の広いワイングラスだからこそ、芳しい香りが芳醇に広がります。透明なガラス越しに見える美しい色合いも、 日本酒の味や風味を引き立てる重要な要素になります。ワイングラスを通して、日本酒に長年親しんできた我々日本人の知ることのなかった、 新しい世界が広がったと言うと言い過ぎでしょうか。
さて、私はこのお披露目会に参加して今年で3年目になりました。私にとってこのイベントは、日本酒のトレンドを測る定点観測の場だと認識しています。 毎年同じ場所に身を置き、蔵元の人たちとの会話や日本酒ファンの皆さんの様子を観察しながら、昨年と異なる微妙な差異や、 そこに漂う空気を感じることができればと思っています。もう一つには、ワイングラスで嗜むスタイルは正に欧米人の飲み方そのものです。 ここに出品されている蔵元は、大いに海外のマーケットを意識しているはずです。お酒造りやマーケティングにどのような考えを持って取り組んでおられるのか、 そうした情報を得ることも、「日本酒のこれから」を占う重要な要素だと考えています。
味のトレンドはやはり「軽さ」です。本来重たくなりがちな純米酒も、酒米や醸造方法を工夫してさらっと軽く仕上げたお酒が目に付きます。 ターゲットはもちろん女性。今年も会場には大勢の女性が詰めかけていました。また、あえて山田錦や五百万石といった酒造好適米を使わず、 従来の日本酒に比べ酸味の強いお酒を志向する蔵元もありました。これもワインを意識したもので、食事に合わせやすく、食中酒として長く楽しんでもらうための試みです。 日本の伝統や文化を色濃く映す日本酒の世界にも、確実に変化の兆しが訪れていることをうかがわせます。
七島 徹
2016.05.27
柏洋通信Vol.09
【5/27 FABEX2016に行ってきました。】
4月13日、ビッグサイトで始まったThe World Food And Beverage Great Expo 2016(略してFABEX)に行ってきました。私は開催初日の午後に行ったのですが、受け付けは長蛇の列。人々の関心の高さに驚かされました。FABEXは主にスーパー、コンビニ、外食産業を対象とし、食品・スイーツ・飲料から機械、設備まで網羅される、正に食のプロたちに向けた見本市です。規模としては3月に開催されたFOODEXには劣りますが、その性格上食の次のトレンドが色濃く出ており、我々のような関連する業界にも非常に参考になります。
さて、昨年の今頃一世を風靡したココナッツオイルですが、今年は輸入品、国産品を問わず一切目にすることがありませんでした。 オリーブオイルと胡麻油は出展されていたものの、食用油ブームの終焉は確かのようです。 それに代わるヒット商品が中々見いだせない中、当社にとっても業界にとっても厳しい状況が予想されます。
FABEXでは同時に幾つかの見本市が併催されています。今回はハラールマーケットフェアとカフェ・ベーカリーフェアに注目しました。ハラールとはイスラム教で「許されている」という意味。イスラム教徒の人たちは、イスラムの教えに則って適切に処理された食品(ハラール認証された食品)しか食べることができません。 急増するイスラム圏からの観光客や、世界で16億人に達するマーケットをターゲットに、日本の食品メーカーも続々と参入しています。
カフェ向けのスイーツやパン類、そうした食品を提供する機器も目につきました。スターバックスに代表されるシアトル系カフェは、今や日本でもすっかりお馴染みなりましたが、 既に次のサードウェーブのうねりが日本にも入ってきています。
ハラールやサードウェーブの流れが、今後ガラスびんの需要にどのような影響を与えるかはまだ分かりませんが、容器メーカーとして関心を持って見守りたいと思います。
七島 徹